瑞光メディカル教室

1時限目 キズのケア

LESSON 1 キズの種類について
 外部からの機械的な刺激により皮膚に生じた損傷をキズと言います。
通常の生活で受けやすいキズは、切り傷(ナイフやカッターなどの鋭利な刃物やガラスの破片などで切ったもの)、すり傷(擦過傷、転んだりして擦りむいた傷)、刺し傷(キリや釘などの先の鋭いもので刺した傷)などが主なものですが、大きなケガをしたりすると皮膚組織が大きく欠落してしまうような場合もあります(皮膚欠損創)。靴ヅレやマメのつぶれもキズと考えてよいでしょう。
 一方、薬品や放射線、熱によって生じた皮膚の損傷もキズになります。代表例は、やけど(熱傷)になりますが、皆さんも一度は経験されたことがあると思います。さらに、“日やけ”もやけどの軽いものと考えられキズの一種ということになります。
 キズは皮膚の表面から内部へ損傷が進むほど、また、皮膚組織が大きく欠損するほど重度ということになります。
LESSON 2 キズが痛いのはなぜ?
 皮膚組織には痛みを感じる神経が通っており、外部からの刺激が、この神経に伝わると痛みを感じます。また、皮膚組織が損傷してキズになると、神経が露出することになり非常に強い痛みを感じます。
 加えてキズが空気に触れて乾燥すると、更にこの神経を刺激・傷つけることになり、痛みが増すことになります。逆に、キズを空気に触れないように何らかの材料(ドレッシング材)で優しく覆ってやると、痛みは和らぐことになります。
LESSON 3 ドレッシング材とは
 キズを覆う材料のことを“ドレッシング材”と言います。ドレッシング材をキズに使用する目的は、 を挙げることができ、ドレッシング材の最も代表的なものは、皆さんも良くご存知のガーゼということになります。ドレッシング材には、ガーゼ以外に救急絆創膏や被覆保護材、創傷被覆材などがあり、医療現場ではキズの状態やその治療方法に合わせて、種々のドレッシング材が選定され使用されています。
LESSON 4 キズを負った時、まずすること
出血している場合は、まず止血※)を行います。出血が治まれば、キズ口をよく洗ってキズに付着したごみなどの異物を取り除きます。
通常、生物の皮膚や腸には、ごく普通に細菌がいて、細菌がいるだけでは、体に悪い影響を及ぼす事はありません。
一方、化膿(感染)とは、キズに細菌がいて、炎症をおこしている状態のことをいい、痛み、発赤(キズの周囲が赤くなる)、はれ、熱を持つなどの症状が出ることをいいます。
キズが化膿(感染)する場合は、キズにごみ(木片、トゲ、木の葉、土、錆び)などの異物が残っている場合がほとんどで、これら異物が細菌の栄養源となり、細菌が爆発的に増えることで化膿(感染)に至ります。また、痂皮(かさぶた)や壊死組織(死んだ組織)なども、同様に細菌の栄養源となり化膿(感染)の原因になります。
したがって、化膿(感染)を防ぐ上で、キズ口に付着した異物を取り除き清潔にすることは、非常に重要な処置になります。
なお、キズ口を清潔にするには消毒薬を使って消毒することが一般的とされてきましたが、最近ではキズ口の組織までダメージを与えてしまう消毒薬を使用するより、むしろ水道水や生理食塩水などできれいに洗い流す方が効率的でかつ有効であるということから、主に洗浄処置が中心に行われています。
動物に噛まれた時など、キズ口が小さく、深いキズは、キズが化膿(感染)し易いため、直ちに医師の診断を受け適切な処置を行って下さい。また、洗浄してもキズ口に異物が残って取れない場合も速やかに医師の診断を受けることをお勧めします。

※)止血方法
キズ口を出来るだけ心臓より高くなるように上げ、出血個所を静かに圧迫します。
(“ロープ等で心臓側を縛る”は迷信で、止血効果を得られるものではありません。)
LESSON 5 キズから出る滲出液(ジュクジュク)
キズを負うと、キズ口からジュクジュクした液体が出てきますが、これは滲出液と呼ばれるものです。この滲出液(ジュクジュク)は、よく膿と間違われたりしてキズに悪いものと思われがちですが、実は細胞を増やし・成長させる成分(細胞成長因子)が含まれ、キズが治る時に必要なものです。
従来は、ガーゼなどを用いこの滲出液をキズ口より吸収・除去し、キズ口を乾燥させる治療を中心に行われてきましたが、最近では、この滲出液の能力をうまく活用するキズの治療法、例えば湿潤療法などが行われるようになってきました。

NEW湿潤療法についての参考図書
書名:「キズ・ヤケドは消毒してはいけない」
著者:夏井睦(練馬光が丘病院 傷の治療センター)
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2時限目 医療機器の基礎

LESSON 1 滅菌品、未滅菌品の選び方
医療機器を使用条件で分類すると、(A)メス、ハサミ、鉗子などのように再使用される医療機器と、(B)ガーゼや衛生材料、絆創膏などのように単回使用で使い捨て(ディスポーザブル)される医療機器の2種に大別することができます(表1参照)。(A)の再使用される医療機器は、複数の患者で使い回しされることになり、使用される部位の細菌環境(無菌、有菌)に関係なく、患者間の交差感染を防ぐ上で、全て滅菌品が選択される必要があります。
一方、(B)の使い捨て(ディスポーザブル)で使用される医療機器は、使用される部位の細菌環境が本質的に無菌が保たれている部位ならば(例えば、深部臓器、血管内、骨格など)、細菌の侵入を出来る限り防ぐべきであり、滅菌品が選択されることになりますが、使用される部位の細菌環境が無菌でない(有菌)、例えば、創傷面(キズ口)、皮膚、口腔、下部消化管などに使用される場合は、未滅菌品が選択されるケースが増えています。
皮膚も含めキズ口には、既に多くの細菌が定着しており、使い捨て(ディスポーザブル)条件で使用される医療機器では、患者間の交差感染の危険性も少なく、未滅菌品が選択されるケースが増えているという訳です。

医療機器
(器具・材料)の使用条件
使用される部位の細菌環境
本質的に無菌
[深部臓器,血管内,骨格など]
無菌でない(有菌)
[創傷面(キズ口),皮膚,口腔,下部消化管など}
(A) 再使用
[メス,ハサミ,鉗子,ピンセットなど]
滅菌品 滅菌品
(B) 使い捨て(ディスポーザブル)使用
[ガーゼ,衛生材料,絆創膏など]
滅菌品 未滅菌品
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